久しぶりに五十嵐劇場のアトリエへ通う毎日、その道には、いつもお月さんが、 海岸線を運転する上の空から見守ってくれているようでした。 ひどく暑いこのごろ、この暑さを押しのけるように、夕方には虫たちが一斉に鳴いて秋を引き寄せます。
　17年前、新潟に戻って１年経ったくらいの頃から、この場所と親しくなりました。 寒い季節にストーブを置いて公演した事の方が多かったように思います。 トタン一枚で外と仕切られているこの会場ならではですから、寒いも暑いも共にです。
　この波板トタン壁の美しさをご覧あれ。
　五十嵐劇場のみなさん、いつものようにありがとうございます。 しみじみと、共にあるこの場所を味わいたいと思います。 そして場所がここに運んでくるものを、ここに在るすべてのみなさんとともに眺め、 苦しみ、悲しみ、喜び、楽しみ、祝福したいと思います。この場所はどこにでもつながってゆきます。
　最後に、新潟での初期の私の踊りを見守り、この五十嵐劇場での撮影やチラシ製作などで限りなくお世話になった、 一昨年亡くなられてしまった柳正利さんもどこかで観てくださっているといいなぁと願っています。

ご来場ありがとうございました。

堀川久子（公演パンフレットより）

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